アンテライフ

今更でもないのですが、これからアンテを始めてみようと思う方々に少しでもお役に立てればと思い、
アンテ飼育の私が思う基本的な事を、経験に基づいてご紹介するコーナーです。是非参考にしてみてください。
※このコーナーの内容を模倣し上手くいかなっかたとしても私は一切の責任は負わない事をご承知おきください。


◆産地別形状の違いを勉強しましょう◆ 06.10.28追記

以前からもよくあったのですが、最近でも明らかに『それ、マレーアンテじゃないよ〜』みたいな個体の
オークション等への出品を見受けます。
アンテは大きく分けると3タイプに形状分けできると思います。
一つ目は、国内に最初に入荷してきたタイやラオス、それに中国、ミャンマー、ベトナム等の
インドシナ系
二つ目は、
マレー半島もの。
三つ目は、北東インド、ネパール、ブータン等の
ヒマラヤ系です。
特徴的なものは、あえてここに詳しく記しませんが、インドシナ系は内歯は上がらず、特大でも85mm程度、
マレーは体は艶消し、内歯上がらずその面積が突出して広い個体が多い事、特大で80を少し超える程度、
ヒマラヤ系は光沢が強く、70mm台でも内歯が前方に位置し、特大では92mmが某専門誌で有名。
特にマレーアンテについては、その特徴をよく勉強してみて下さい。
明らかにヒマラヤ系の形状をしているのに、マレーアンテ80mmとして出されてしまうと、
多くのマレーアンテマニアさんが、がっかりすると思います。
マレーの特徴を活かしたまま80mmを躍起になって真剣に狙っているブリーダーさんがかわいそうです。
私の私見ではマレーアンテは亜種にしてもいいのでは?と思う程です。
マレーとして買った幼虫だからマレーという理論は、
アンテブリーダーには通用しません
アンテのみならず、他の虫でもよくあるみたいですが、
明らかに違うのに出品してるのは、自分の無知をさらけ出してるだけで恥ずかしい事です。
※どうしても特徴的に微妙な個体も個体差により存在するのは否定しません。
このインターネットの発達した時代です、売る側、買う側もよく勉強しましょう。
最近の私の切実なるお願いですm(__)m


◆成虫の管理◆

25℃までで管理して下さい。特に夏場の高温と蒸れには弱い虫なので注意しましょう。
地域によるかと思いますが、冬場は人間が通常生活している空間でしたら、
常温管理でも平気でしょう(我家は奈良県です)。
しかし、ペアリングの控えている個体は温度をかけてください。

エサは通常市販のゼリーで充分です。♀には高タンパクなものを与えてください。
寿命は様々ですが、我家で一番長生きしたアンテは4年以上です。通常は2〜3年は楽に生存しています。
60mm台の小さい♂は何故か寿命が短い傾向にあるようです。


◆ペアリング◆

我家では平均的に羽化して約半年後ペアリングさせますが、♂の場合は成熟期間が体長により異なりますので、
エサを食べ始めて1ヶ月ほどすればペアリングできるでしょう。
大きい♂ほど成熟期間が長くなります。♀は成熟が早いです。
ここで言う成熟期間とは羽化からエサを食べるまでの期間を言います。

ペアリングは目の前で行わせます。直径20cmほどの丸い容器にコルク板をひいてます。
丸い容器だと♀が逃げ回っても、直ぐにまた巡り会えるのでお奨めです。

最初は♂に♀のオシリなどをクンクンとやらせます。実際には触覚を当てる感じです(^^ゞ
その気になった♂は触覚等を小刻みに動かし、素早く♀とVの字になって事を運びます。
なかなかその気にならない♂もいますが、静かに見守ってください。

また、♂がその気でも♀が受け入れない時、♂が怒って♀を本気で挟みにかかる時がたまにあります。
それまで♀に覆い被さってた♂が、体勢を低くして♀に攻撃し始めたら、非常に危険な状態ですので、
時間をおくか日を改めてチャレンジしましょう。気性の激しい♂は必ずいます。
ですが、♂の体の位置が♀に対して垂直状態(Tの字)での顎を開いての威嚇行為もありますが、
触覚をオシリに当てて小刻みに動かしてる状態でしたら、やる気満々状態なので大丈夫です。
本気になって♀を挟む事はありません。

本気で挟んでしまったら、素早く霧吹きでプシュっとやってください。驚いた♂は♀を放します。
ですので、ペアリングの時は必ず
霧吹きを横に置いてます。
因みに我家でのペアリングでの♀に致命傷を負わせるほどの事故は今まではゼロです。

それから、サイズ的に交尾の上手い♂は70mm台後半です。
非常に動きが素早く、やる気になるのも早く(♀を認識する能力に長けてるのでしょう)、
惚れ々々するほどにテクニシャンな♂もいます。
80mmを超えるほどに動きが鈍くなり、見ててじれったい事、多々あります(^^ゞ

また、私は1回の交尾では不安なので日をおいて、
2〜3回行わせてます。
その後、♀には高タンパクなゼリーを2〜3個食わせてください。


◆産卵セット◆

私は基本的にマットのみでのセットです。材は使いません。
経験上、マットのみのほうが♀のコンディションが保たれ、産卵数も多いと感じるからです。
それに割出しが楽なのと、コスト面でも有利です。
ですが、材を入れて沢山採る方もおられるので、好みの違い位の感覚でいいと思います。
尚、材を使う場合は必ず
柔らかめのものをチョイスしましょう。

私の使ってるマットはHPでもご紹介させて頂いてる
完熟マットです。
他にもアンテ産卵に実績のあるマットは市場に沢山ありますので、完熟マットも含めてそれらをチョイスしましょう。
水分の調整は文章で表現するのは難しいのですが、握った感じがしっとりで粘りのある感じでしょうか?(汗)

ケースはプラケース中を多用してます。大もたまに使います。
極端な話でもなく、アンテは小でもミニでも充分に産卵します。スペースとの兼ね合いで決めましょう。

マットを固詰めしますが、プラケースは必ず下にクッション代わりになるタオル等をひいてください。
押し固める時にケースがバキッと割れる恐れが多々あります。
ケースを逆さにしてもマットが落ちない位に押し固めましょう。
深さは10〜15cm詰めれば充分でしょう。その上に転倒防止用に材等を置いてゼリーを入れれば完成です。
そうそう。交尾済みの♀を入れるのをお忘れなく!(笑)

私の場合、
産卵の管理温度は大体20〜22℃です。

セットに♀を投入し、ドキドキワクワク♪となりますが、稀にセットに入れたとたんに爆睡する♀がいます。
ゼリーを食べた形跡もなく、マットの中を徘徊した形跡もない状態が続く様でしたら、間違いなく寝てます。
私はこんな時は、そのまま起きるまで待ちます。過去に寝ているからと♀を出して、再交尾させたり、
セットに入れる前の管理ケースに入れてゼリーを食わせたり、マットを変えたり、材を入れてみたり・・・色々やりました。
そうした結論が『
産まない時の♀は何やっても産まない』です(^^ゞ
産む気になれば、元々多産な虫ですのでバコバコ産みます。
寝ている♀のセットはそのまま放置していますと(たまに観察要)、半年後に卵が見えた!なんて結果になるでしょう。

産卵中の♀がよくマット上に上がってきて、ゼリーを食しているならゼリー切れに注意しましょう。
その様な♀へのエサ切れは産卵数に響きます。

割出しのタイミングですが、ケース越しに見える卵が全て孵ったら割る様にしています。
幼虫が見えているのに、あまり放置し過ぎると♀に幼虫を食べられてしまう事もありますので注意しましょう。
いくら高栄養のゼリーを入れてても、幼虫好きな♀の勢いは止められません。(♀の個体差もあります)
割出した幼虫はプリンカップに一時的に保管しましょう。卵は詰めたマットに穴を開けて入れておきましょう。
プリンカップの側面に穴を開けてそこに卵を入れておけば、観察できてよいです。


◆幼虫飼育◆

マット飼育等も色々やった結果、菌糸瓶での飼育が一番お奨めです。
管理温度は我家では大体18〜20℃です。

最初の投入は2齢で幼虫がツヤツヤしてる時に行ってます。
1本目は600cc〜1100ccがお奨めです。これで出来れば最低3〜4ヶ月引っ張ります。
♀は極力1本で羽化させる様にしています。(エサの状態があまりに酷い様だとマット飼育に変える事あり)
理由は♀の羽化不全は極端に少ない事にあり、それならば、
コスト的に有利なのと♀を大きくしてもあまり意味がないからです。

2本目は♂のみ1500cc〜2000cc位の容器に入れましょう。
ここで体重を測り20g台でもガッカリしなくても大丈夫です。2本目でド〜ンと重量が増します。
大きい幼虫は2本目で50gを超える事もありますが、平均40gを目標にしてください。まずは80mm目指しましょう。
理想の食い方は、始めは底の方でじっとして食べ、じわじわと食いあがってくる状態です。
アンテ幼虫は居食いが基本ですので、あまり動き回ってない状態が最高の状態です。
動き回る事を『暴れる』といいます。

気の早い♂は2本目で蛹室を作る事があります。これは仕方ないです。残った幼虫に期待してください。
でも、2本でも案外80mm超えてくるスーパーな奴もいます!
2本目は状態を見ながら3本目へと交換します。その『状態』が問題ですが、水分でドロドロ、オガの劣化が酷い様なら
直ぐに交換をお奨めします。次の菌糸瓶を準備できない状況でしたら一時的にマット飼育もいいでしょう。
理想的な食い方をしてきた幼虫なら、食い上がりすぎて、また底の方に移動を始める前に交換します。

3本目(これで蛹化させます)は今でも私にとって非常に難しいというか、やり甲斐のある交換となります。
交換時に巨大な幼虫でも3本目に入れたとたんに大暴れ!なんて事もあります。
アンテは暴れると間違いなく、坂道を転がる様に体重が落ち、期待するほどの成虫になりません。
しかし上手くいくと素晴しいアンテが出ます。
ブリーダーの質的要素の強い3本目ですが、成功した時の喜びは大きいです^^
失敗を恐れず、ここぞと思う時に交換してみてください。経験を積みましょう。

尚、我家では現在、2本で蛹化させる事を試験的に行っていると、追記しておきます。

菌床飼育は観察する事が一番大事と私は思います。
見る事の積み重ねで、いい状態と悪い状態の判断能力が自然に養われ、失敗しても次へのアイデアが浮かびます。
でも、むやみやたらと瓶を触りまくるのは幼虫が驚きますのでほどほどに。優しく扱って下さい。

菌糸瓶については、菌糸のよく回ったものを使用してください。
ブロックを詰め直した瓶の場合は、詰めて白くなったからと1週間位で入れてしまう事は厳禁です。
最低でも1ヶ月は菌を回してから入れる様にしましょう。特に3本目の菌糸瓶の状態は重要です。
現在、様々な菌糸瓶がありますが、アンテに実績のある菌糸瓶を使う事をお奨めします。

余談ですが、最近は菌糸瓶の添加剤の影響と思われる弊害をよく耳にします。
実績のある菌糸瓶を使う事をお奨めしますと書くには書きましたが・・・

アンテだけに限って言える事ではないですが、成熟してるのにお腹の赤い個体はいませんか?
やたらと新成虫で落ちる個体はいませんか?
幼虫の死亡率が高くないですか?(我家では幼虫で落ちる事はほぼゼロに近いです)
その様な場合はいくら良形が出ても、菌糸瓶を変える事をお奨めします。
累代できなくては前に進めません。固定とか血統とか以前の話になってしまいます。

最近は、太さを追求する余り、ホルモンのバランスなどを崩されてしまう虫が多いと思います。
虫本来の持つポテンシャルを引き出すのでなく、薬漬けにされ作られた虫を血統と言えるでしょうか。
もっと菌糸瓶のみに頼るのでなく、ブリーダーとしての質(腕)も高めませんか。
きめ細かい管理、無謀とも思える実験、私は色々試行錯誤してきました。
それだけに数多くの失敗を繰り返しましたが、どれ一つとっても今の私に無駄なものはないです。
だから、何十年も古くからやってこられた大先輩のブリーダーさん方は経験年数の乏しい私でも受け入れてくれます。
非常に有難い事だと思います。今後も切磋琢磨していく心構えです。
累代を続けるのに厳しい時代が目の前まで来てる気がしてなりません。
本当に良い虫、愛着のわく虫とは、何代にも渡って累代できる(固定できる)虫だと私は思います。



◆蛹化〜羽化◆

蛹室を作り始めたら、後は蛹化するまでそっとしておいてください。
また出来れば前蛹の早い段階から、それまでと少し低い温度の場所に移動させてみるのもお奨めです。
これは、データとしては説得力のあるものはないですが、私の作出したアンテが答えを出しています。
どういう事なのか一度考えてみてください(^^ゞ
大きい幼虫で1ヶ月以上の前蛹期間となります。早いもので3週間位でしょうか。

蛹化したら、最低でも蛹室の天井を開ける露天掘りを行い、出来れば人工蛹室に移しましょう。
羽化不全が何よりもショックな事ですので、ここでしっかりと魂を入れ、作業を慎重に行ってください。
私は早く蛹を見たがるせっかちな人間ですので、蛹化して1週間もしないうちに出してしまいます。
ですが、非常に弱いプニョプニョ蛹ですので、あまりお奨めはしません。3週間後ならより安全です。
羽化までは小さい個体で1ヶ月ほど、大型になると2ヶ月かかる事もあります。

羽化したら1週間は見るだけにして触らない様にしましょう。
羽化直後は体の中も出来てない状態ですので、少しの衝撃でも致命的なものになるかも知れません。
ですが、1週間経ったからといっても成熟するまでは衝撃に弱い事は頭に入れておきましょう。


◆最後に◆

アンテはやはり国産オオクワ等と比べますと、低温飼育が基本です。
国産もやりたいしアンテもやりたい・・・そんな方は飼育スペースで一番温度の低い場所をアンテ場所にしてください。
国産オオクワ等を棚の上に、アンテを棚の下に、置いてみてください。
また、アンテのみに力を入れる!という方は是非ともアンテと同じ温度帯で飼育できる種にも挑戦してください。
代表的なものと言えば、ミヤマやキクロマトス、それにサタンオオカブト等ですね。
ヘラクレス等はアンテと同じ温度でやりますと、幼虫期間は長くなりますが、大型が出やすいです。
アンテ以外の虫をやる事でアンテに応用できる事もあります。

どの種でもやればやるほどに奥が深くなっていきますが、
冷静に考えると、アンテはとてもブリードの簡単な種です。多産するし幼虫も大きいし、何より成虫がかっこいいです♪
是非、始めてみてくださいね。

今後、このページは新たに気が付いた事や他の最適な表現方法が見つかれば随時更新していきます。
文字しかないこのページを最後まで読んで下さり、有難うございましたm(__)m
このページがこれからアンテを始められる方の一助になれば幸いです。

Special Thanks To SSBCさん