Gormenghast

これまで、多くの映画化の試みを挫折させてきた、アーヴィン・ピークの傑作「ゴーメンガースト」を、イギリス BBC が史上初めて映像化した、全4話のテレビ・ミニシリーズです。2000年2月に北米初放映。3巻の原作小説は、創元文庫から出たときに買いはしたものの、あのボリュームの前に負けてしまいました。ということで、原作を読んでいない立場からの感想です。
物語は、ゴーメンガーストの後継ぎタイタス・グローンの誕生から始まります。陰謀をめぐらせるステアパイクは超絶美形の少年で、口先三寸と魅惑的な顔立ちを武器に、一介のキッチン・ボーイからのしあがっていきます。この美形のピカレスクぶりだけでも、耽美好きな人にはお奨めです(オレはそんな趣味ないぞ)。タイタスの双子の叔母も、「八つ墓村」(豊川悦史のほう)の岸田今日子を思わせる、なんともいえない奇妙さを発揮していました。
タイタスは成長していくので、パート3、4と異なる少年が魅力あるタイタスを見せてくれます。特に、パート4のタイタスは秀逸。原作を読んでいないのでなんとも言えませんが、タイタスの乳母の娘の扱いは、中途半端で不満が残るかも。あの大作を5時間くらいにまとめるには、かなり無理が必要だったと思います。
BBC が実験的試みをかねて意欲的に作っただけあって、コンピュータ・グラフィックで作ったゴーメンガーストの映像は魅力たっぷりです。絵が美しい反面、合成が甘いところが瑕でしょう。また、クリストファー・リー(王国の忠実なる老僕。あの歳で活力ある演技ができる彼は、本物のドラキュラか)をはじめ、ベテランを多く配した俳優陣は、イギリス演劇界の奥の深さを感じさせる演技をみせてくれました。パート2でのタイタスの父の演技が、私は好きです。タイタスの母(傑女!)の肩にとまっている、鳥のマスター・チョークなど小技も効いています。テーマ曲を歌ったボーイ・ソプラノも、内容に見事にマッチしています。
誰が見ても面白いという種類の番組ではないので、BS 向きかもしれません。NHK が権利を取って放映してくれることを望みます。
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