Anne and the King

名作「王様と私」のリメイク。デボラ・カーとユル・ブリンナーによる昔の映画がミュージカルだったのに対して、今回はより史実に基づいたリアル・バージョンです。「王様と私」が作られた頃は、ミュージカル映画が多く作られた時代だったように、今回も、ハリウッド全体に「リアル」化が進んでいる(タイタニックやプライベート・ライアンなど)時代を反映しているようです。
ユル・ブリンナーは、どこか南の夢の国の王様という感じでしたが、リアルになった今回は、西欧諸国が植民地化を迫る中で、この国難をくぐりぬけようと近代化を推し進める賢明な王として描かれています。シャムの王を演じた Cow Yun-Fat は、香港で数多くの悪役を演じてきただけあって、見劣りするものではありませんでした。
以前はデボラ・カーが可憐に演じたアンナの役に、ジュディー・フォスターが挑戦しました。シャム王とのウィットに富んだ会話の中で、見えない火花が飛び散らせる様は、昔の作品よりも迫力をましたと思います。素晴らしいセットの中で、大勢のエキストラを使った大作ですが、残念なことに、タイの許可が得られなかった(シナリオを見せたところ、拒否された)ために、撮影の多くはマレーシアで行われました。何か物足らなさが残ったのは、そのせいもあるかもしれません。
リアルになった分、昔の夢物語のような楽しさに欠けました。リアルな割に、クライマックスの展開が甘くなっているのは残念な気がします。ジュディー・フォスターは名演だったと思います。でも、私はデボラ・カーが好きです。

(22日追加)タイでは「王室に対する敬意に欠ける」という理由で上映禁止だそうです。敬意に欠けたかなあ、と思わないでもないですが、タイ国内におけるタイ王室の位置付けを考えると、納得できないでもありません。
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