21世紀に入った現在、様々な問題に直面しつつあります。
地域紛争の激化などの国際間の問題もそうですが、様々な自然環境問題が大きくなってきつつあります。
日本国内においては不況等による経済的問題に加えて、地球的規模の自然災害が多く発生し、その自然災害の1つである地震活動の活発化が今後日本を取り巻く地域で発生する確率が高まっており、その被害の甚大さが予想されています。
木構造建築研究所 田原においてもこの地震災害の減災のため、木構造技術を活かし、世の中の役に立つ木構造設計事務所として新築から既存の木造住宅の耐震性向上の活動を行いたいと思います。
当事務所がキーワードとしてあげるのは、「安全」・「安心」・「再生産」・「環境への低負荷構造」です。
1995年1月17日におきた「阪神・淡路大震災」で、日本の「安全」は大きく揺らぎました。
道路・鉄道・水道等の社会インフラの崩壊もそうですが、なによりも住宅の被害の多さに一般の市民の方や、関西の建築関係者は愕然としたと思いますが、私は「やはり、恐れていたことが現実になってしまった」と思わざるを得ませんでした。
当事務所は、1989年より木造の建築物における構造設計・監理を主とする木造建築の構造設計事務所として運営してきました。構造設計・監理が一般化していない、小規模木造建築物の構造をきちんとしてやろうという目論見でした。
1988〜1990年ごろ2階建木造住宅の構造安全性について「基準法」を満足するだけでは、本当の耐震安全性能を確保したとは言えないと、京阪神地区の設計者等へ言って構造設計を受注すべく歩き回りましたが、全く相手にされなかったのが当時の状況でした。
当時の社会は、バブルの絶頂期で、住宅は建てれば売れるという時代であり、木造では、建築基準法においてもきちんとした構造設計が要求されるのは、3階建や、集成材等で大空間を構成する建物だけでした。このような状況下では、全ての木造2階建て程度の住宅には、構造設計が必要とされていませんでした。
しかし、このような必要とされない職業であれば、辞めてしまおうと思ったとき、恩師となるべき人との出会いや、「阪神・淡路大震災」が発生したのです。
恐れていたことが現実に起こり、「当事務所の技術が世の中の役に立つのなら」と思い、再度実務面より少しでも役立つ木構造の事務所として仕事をやり始めた次第です。
その後、2006年に発覚した「姉歯耐震偽装問題」から2009年にかけて、建築関係各基準改正等における混乱が生じました。しかし、これらの改正に対して、当方の今まで行なって来た事は何ら変ることなく対応出来ました。
このように、我々は常に法律の一歩も二歩も先を見据え、本当の安全とは何かということを考えながら木構造設計を行なっています。
住宅の高気密化や、内装の変化に伴ってホルムアルデヒドなどの揮発物質その他による人体への被害が出てきています。
木造では、接着材等がその原因に該当していましたが、2003年7月の法改正より、より正確に室内環境の科学物質規制値が設定され、換気等も義務付けられました。
当事務所では構造性能と環境性能の両立を目指して安心できる建物作りを目指しています。
住宅でもLCC(ライフサイクルコスト)を考えて、省資源化、低環境負荷を考えておかないと将来が安心できない時代が来ています。
その中で木造はイニシャルコストが低いこと、次世代に再利用可能であること、再生産可能なことから将来の主流となるべき構造であるといえます。
その中で、戦後は崩壊していってしまった、生産→利用→利益の山への還元→育林(再生産)という木材の再生産サイクルを再び確立することは急務であるといえます。
そのような循環する建築システムを構造設計者の立場から係わり、提案していると言う話を聞いたことがありません。
また、古民家等の木造建築において、解体→廃棄→新築 といった消化型でなく、再利用の出来る木構造のシステム構築に役立ちたいと思います。
当事務所では今後の目標として、構造設計の立場から環境問題についても考え提言し、再生産可能な社会の実現を目指していこうと思っています。
当事務所では、まず手始めに、山への還元を目指し、生産者・施工者・施主の3者の両立と協働をめざす産直木材のグループ「ともいきの杉」の活動に参加しています。
21世紀の新しい技術革新の中で、建築基準法も大きく仕様規定から性能規定へ移り変わっていますが、こういった時代こそ木組みの素晴らしさを日本全国(出来るのであれば、全世界まで・・・)に発信すべく、日々精進をし続けています。
また、伝統技術の衰退が進む中、何とかそういったものを残していきたいと願い、当事務所では、木組を生かした構造デザインを提案して、新築住宅から古い建物の耐震補強まで、様々なものに取り組んでいます。
一般住宅から伝統的な神社仏閣及び公共建築等の中規模空間まで集成材に頼らないで(もちろん集成材を利用することもありますが)、国産材を利用した木造建築の構造設計を行ない、環境を配慮した木構造の建築を残していきたいと思っています。
これからの構造設計は地球への環境負荷を考えて、木構造の可能性を広げ、環境負荷のかからない建築を次世代へ残すことを目指さなければならないと考えています。