建物は、3階部分で2間四方の方形となり、そのまま2階へ葺き下ろした屋根を持つ。
外観写真でそのように見えないのは、敷地形状に沿って外周壁が揃えられているためで、平面形状は台形に近い形である。
敷地は傾斜地にあり、眺望に応じて開口部が切り取られている。
2階へ上がる階段は、中央力桁で段板を支持しており、壁とは縁が切れている。階段室の暗さがなく、3階まで連続する階段は、柔らかい光や風を呼び込んでいる。
2階から3階への階段は、両側の格子壁に段板を落とし込んでいる。格子材は90角の米松で、建て方の順番や養生、材の乾燥による狂い等において、現場の協力と技術力が発揮された。
いずれの階段も、意匠だけでなく、構造的なメリットも持ち合わせている。力桁は筋かい(壁倍率2.8倍相当)の役割を、面格子は耐力壁(壁倍率3.0倍相当)として力を負担できるよう、基礎や金物の仕様を決めている。これら階段の耐力要素を含めることにより、耐震等級3以上が担保される。
写真中央に見える3階は、一面が外周壁で三方は吹抜けに面している。大屋根によって連続した水平構面が確保され、地震力の伝達を可能にしている。小屋組は化粧材となっており、隅木や斜めに直交する梁の仕口などでは、高い精度で納められた。