大阪府八尾市にある木造2階建の住宅。
この住宅は、大阪の新進気鋭の建築家のFEEL'D一級建築士事務所の矢野友之さんと市場谷康夫さんたちの計画に参加したものである。
そのときに庭に面して開放的な計画にしたいとの要望があり、また、その大きな開口の上には、庇の出約1.8mの大きな1階庇がある計画であった。
さらにこの大開口の上の2階部分には1m程度のバルコニーがあり、そのバルコニーの中央部分には2階の大部分の荷重をうける柱が来る計画であったため、かなり複雑で高度な構造設計となったものである。
スパン4間以上の開口部は、ほぼ全開口となり、内部と外部とが一体となる感じがする空間となっており、建築家の意図がよく現れていると思われる。
このような計画は非常に大胆ではあるが、建築家の木造における可能性を追求し、意匠計画において木造の常識を超えた空間の質を高めた意欲のある作品となったものと思われる。
広いリビングであるが、短辺方向は2間以上あるが狭く感じる気がする。それほど、4間以上の大開口が開放的な空間を作り出しており、通常の木造住宅であれば必ず中間の2間スパンの所に柱が来るのだが、構造的工夫によりこのようなことが可能となったものである。
居間つづきの広縁と中庭が一体となって、パーティ等に利用されており、訪問者が「木造でこんなことができるとは...。」と驚いているようである。
大開口の構成している梁とその梁から持ち出している庇の構造施工写真。
このように非常に庇の出のある構造を特別な方法を用いないで、通常の小さな木材と木造で一般的に使われているZマーク金物で構成した。施工中は中央部に約5mm程度のむくりをつけ、構造工事が完了するまでサポートにて対応した。
この大開口を構成する梁は4寸x1尺2寸の4m材を利用して、ジョイントを設けており、通常のZマーク金物と構造用合板でできた構造体である。
このような工事が可能となったのは、施工者であるコアー建築工房の高い技術力のたまものであり、特に若手の現場監督である、梅木君は非常に優れた監理能力を有しており、構造面において彼の協力があってなしえたといえる。
また、大工職人の渡棟梁の非常に高度な大工技術のおかげでなしえたことをここに記して感謝の意を表します。
構造見学会を兼ねてこの大開口のたわみを計測するため2階バルコニー部分に約20人に集中的に集まってもらい、更には水1t(1m3)入るタンクを3つ配置し、合計約4tの荷重を大開口の梁に短期荷重として与え、計測することとした。
参加者はかなり不安な気持ちでいたと思う...。
この計測の結果、たわみ量は約1.5mmであり、建築主にも見ていただき確認した。サポートをはずすときに全くたわむ様子は見受けられなかったので、2階のバルコニーにいた人たちもサポートをはずした感覚が全く無かったようで、いつはずしたのか分からなかったといっていた。