No.60 F邸改修工事

2007年12月
耐震補強により高い性能を確保した住宅
構造設計木構造建築研究所 田原(担当: 足達)
施工者 水上建設株式会社

大阪府と奈良県の境界にある生駒山地の麓には「生駒断層帯」が南北に走りマグニチュード7〜8が想定されており大阪府の枚方市から羽曳野市にかけて走っており、その地震動については震度6強の可能性がある。

その地震に対して不安を持つ施主からの依頼で耐震診断と耐震補強をすることになった。在来軸組工法2階建て築30年の耐震補強事例である。

精密診断1による診断の結果上部構造評点が一階は0.5程度であり、二階が0.3程度であった。

そのため施主の要望により「生駒断層帯の直上にあるため、耐震評点を非常に高くして欲しい」との要望で耐震補強後の評点を各階とも3.0以上とした。


耐震補強設計として耐力壁の増設と強化を行ったことにより、その強化した耐力壁の直下に写真の通り鉄筋コンクリートの強化した地中梁を儲け、その地中梁に対し増設強化した耐力壁に取り付くホールダウンしたアンカーボルトを定着させ、浮き上がりに抵抗した。


既設木造住宅の基礎の補強において、現況の布基礎にケミカルアンカーにてベース筋を緊結し、ベタ基礎としての性能と防湿性能をかねた補強を行った。 また、地中梁の補強においては連続した一体性を持たせるため既設の布基礎の立ち上がりをハツリ、新設の地中梁による補強を行った。


基礎の補強において、現状の床下の通風環境が良好であったため、犠害や腐朽菌による劣化がなかったので現状の換気口を生かしながら地中梁の補強を行うこととした。 このために新設する地中梁の梁成が小さい断面としての検討を行い、それに対応した性能とした。


既設基礎の補強を外部は外部で補強し、内部は内部で補強する補強工事を行った。 その結果外部には写真の通り地中梁が設置され、その地中梁を包み込むように外壁の水切りを設置し、耐久性能についても考慮した。


既設の壁の内部側を補強するため、内壁に構造用合板による強化した耐力壁を設けることとした。 そのため、床および天井を撤去し、土台から横架材まで一体とした耐力壁とした。


二階部分の内部耐力壁を強化するため二階床仕上げ材を撤去し、また二階天井も撤去の上、構造用合板を張り上げた。 また、二階開口部の腰壁・垂れ壁においても構造用合板による耐力壁仕様として構成することが耐震性能を向上させる点において重要であるといえる。


現状の屋根水平構面の仕様が4寸勾配で杉木材幅180mm厚さ9mm、垂木@400により床倍率が0.2と著しく小さいため二階の水平構面の耐力が小さく、二階屋根面が破壊されるおそれがあるので写真のように鉄筋による水平ブレースを設置し、床倍率を1.0とし性能を向上させた。



補強後の仕上がった状態は補強前とたいした違いもなく変わらぬ生活ができ、地震に怯える必要も無くなった。


 ©Tahara Architect & Associates, 2009