No.34 兵庫県養父郡八鹿町米里集会施設

2004年 3月
変形トラスを利用した小屋組スパン4.5間の施設(構造材に地元但馬材を使用)
平成16年度兵庫県産木材需要拡大優良事例コンクール 兵庫県木材利用推進協議会会長賞 受賞)
意匠設計アーキテクト デザイン
構造設計木構造建築研究所 田原(担当: 中尾)
施工者 林建設(株)

兵庫県の北部にある八鹿町で、国産材の利用振興として行なわれた事業でできた集会施設である。

木造の平屋建てで、延べ床面積約65坪 木造在来軸組工法。

この施設の計画に当たった地元の意匠設計者であるアーキテクト デザイン主宰の森本氏と地元の施工者である林建設(株)の努力により完成したものである。



この施設の事業においての特徴は、県産材の利用とその材料を利用し、小屋組の新しい技術提案が課題とされた。

この趣旨を兵庫県の担当者及び町の担当者もこの地方の特徴を考慮し設計を行なうようにと説明され、発注者・設計者・施工者・地元関係者が一体となって取り組み、出来上がったものである。

設計完了後の施工期間が諸事情により遅れ、また、小屋組架構の難易度もあり、完成が工期内に収まるか危ぶまれたが、四者の協力の下に出来上がり、地元関係者の方々に喜ばれ、愛着を持って利用される施設となっている。


八鹿町は兵庫県の北部の但馬地域に属し、この地域は大正15年に北但馬地震が起き、さらに昭和2年、北丹後地震が起きた地域に近い場所であり、さらに、積雪1.5mの地域ということを考慮し、耐震安全性能を確保する事にした。

そのため、壁量計算だけの検討で良いのだが、許容応力度設計法による検討を行ない、積雪を考慮した上でCo=0.20以上を確保した性能を有しており、無積雪の時ではCo=0.30程度を有しており災害時の避難施設としての性能を持たしている。


和室45畳における小屋組。

この小屋組は変形したトラスといえる構造で、下弦材の中央の木材が切れており、その補強のため鉄筋が張力処理のために設置している。


変形トラスの詳細は省略するが、基本的には杉材が圧縮と曲げを負担し、鉄筋でスラスト成分の張力を処理している。

この杉材は地元の但馬材で、目視等級1程度の材であり120×150oの材を合わせ、相欠により斜材同士を合わせ、その支点部につぶれ止めのパッキンを設置させている。


変形トラス下弦材には桧材を設置し、テンション処理のための鉄筋は、この桧材の中央部にかんざし金物 60×60×100oにて緊結されている。

また、下弦材の桧二段合わせにおいては、カシによるせん断抵抗ダボ (30×60×150o)とボルトにより一体化されている。

この変形トラスの端部の柱との緊結方法は、ホゾ+Dボルトにより接合されており、1フレームあたりの軸力約2.0t程度を処理する接合部性能を有している。


和室45畳の大広間上部の屋根面に排気及び換気のための越し屋根があり、屋根面の剛性を確保する事がこの建物では重要となる。

そのため、耐力壁と同様に構造用合板で水平構面の必要剛性を確保している。

通常の住宅であれば、床倍率1.0程度の性能で良いのだが、ここでは品確法における最高床倍率の3.0程度を確保している。


外部の犬走り部分には基礎工事の時に出土した石を利用し、丸太柱を受けて基礎代わりとしている。

さらにこのあたりの民家の特徴とも言える、縁側部分の丸太による桁を設置し、下屋の庇部分を90cm程度持ち出している。


 ©Tahara Architect & Associates, 2004