立面的な混構造では通常の木造と違って、上部の木造部分と下部の鉄骨造部分の変形形状が違うことを考慮して、接合部の設計等を行なう必要がある。
本建物は、上記のことを考慮して許容応力度設計(ルート1)を行ない、全体の性能としてCo=0.30以上確保した。
木造部分と混構造(鉄骨造)との接合部分が完全に一体かされて、基礎・地盤へ応力がスムーズに伝達させる必要がある。
一般には、デッキプレート内でアンカーされている事があるが、デッキプレートとスラブのみで性能を満足することは高倍率耐力壁では難しい。
その為、本建物ではHD用アンカーボルトを鉄骨梁へ溶接している。
本建物の2・3階(木造)の架構体における材料は、T邸と同様に、京都府美山町産の「ともいきの杉」を使用し、構造設計により地域材の可能性を引出した建物となっている。
写真は本建物の刻み検査時の梁木口で、芯の部分の年輪間隔は粗いが、梁下端の周辺は年輪が非常に細かくなっている。
梁の引張応力を受ける部分が構造材としては適している。
なお、この刻みは全て水上建設の大工による手刻みであり、プレカット以上の支持性能がある。
このV字型貫筋かいはX字型貫筋かいの応用型で、角筋かいに見えるが、通し貫を半割材で挟み込んだ形状となっている。
仕口の部分に作用する応力(主に引張力)を、木材のめり込み特性を利用し、筋かいにはさみこまれた貫とボルトで下部の鉄骨造へ伝達させている。
この住宅では、「ともいきの杉」グループによる木造軸組工法における革新的な技術を組み込んでいる。
この住宅のスパン2.0間を受ける床梁に「ともいきの杉」の樹齢25〜30年程度の小径木(末口15cm程度)を利用し、仕口等を含む床全体を特許工法(特許申請中)で構成し、荷重実験で安全性能を確認済みである。(実大実験では、2.0間のスパンで居室荷重でのたわみ量は≒1/900程度であった)