多雪地域で、1階に自動車3台分のガレージ(スパン8.19m=4.5間)を有するこの3階建ての木造住宅は、この地域では鉄骨造が当たり前だが、木造でも木構造設計者と共同設計することで、できるという可能性の実現。
この住宅は積雪時Co=0.25であり、雪のない時の性能は、Co=0.30以上の耐震性能を有している。
このガレージ部分では、構造見学会の際にたわみ計測実験を行ない、鉛直荷重に対する性能を確認している。
また、この正面にある「貫筋かい」は、筋かい材に貫を通し、ボルトで一体化させることで、筋かいが引っ張られる場合に、貫面の座金が支圧面となりその応力をボルトが引張力として受け、引張抵抗力を発揮させるようになっている(普通の仕様の90×90筋かいは圧縮でほとんどの性能を受け、引張抵抗は少ないという抵抗力の方向性がある)
本建物で使用した「貫筋かい」は、実験の結果の新検証法での評価は、壁倍率換算で5.0倍以上の性能をもっている。
基礎においても、多雪地域の3階建てということもあり、小規模なビル建築の鉄筋コンクリート造に近いくらいの地中梁の性能を有した配筋とした。
通常の在来軸組み工法であれば、土台敷きから上棟まで1日あれば十分であるが、本建物においては、1週間程度の日程で建て方が行なわれた。
本建物は、延べ床面積が広いだけでなく、複雑な建物形状なので、軸組みの段階から慎重に作業を行なった。
屋根の野地板による水平構面と一階軒桁レベルの水平構面をフランジ(赤色部分)とし、小屋裏内までつながったの耐力壁をウェッブ(黄色部分)としてダイヤフラム構造となっている。(上図)
この写真は、構造用合板による「壁梁」の施工中である。
通常の耐力壁仕様であり、また壁梁とした場合、ウェッブとしての性能がある。
(釘打ち機の圧力を低減して、釘のを高止まりさせた上で、かなづち頭を抑えた。)
この写真は一階軒桁レベルの水平構面の施工中で、ホールダウン金物で固めた上で構造用合板を2重張りとしている。
長期の積雪を考慮し、検討をした結果、一番不利な外部及び内部通りの中央部分で、計算上は最大たわみ量=1cm程度という結果で、≒1/800で基準法レベルのたわみ性能が確保されている。
構造見学会でのたわみ計測実験においては、見学者約100人(約6000kg/15u)程度で、スパンの中央部分に集中してガレージ上部の2階へ上がってもらい、たわみを計測したが、たわみ量はわずか1mm(1/8190)であった。
(約5分間の静止状態・移動時も含め)
また、水平的な力の流れとしては、屋根が一体化されているので、ガレージ廻りの柱への力が均等に伝達されるシステムとなっている。
ガレージ部分は内部に耐力壁を設置できないため、外部に控え壁(バットレス)を設け、基礎まで力の伝達が行なえるようにした。
また、外部階段の足固めには、伝統工法である貫構造と鼻栓を利用。
完成後の内部の様子。
強度のみではなく採光にも有効な面格子による耐力壁を採用した。(法規上は無視するが、実施設計としては等価壁倍率として解析)