岡山県の海の近く。丘の頂上にあるため、瀬戸内海が一望できるところにある家。
潮風のきついこの場所で、前面に壁を一切設置したくないということで、「貫筋かい」を採用。
本建物における耐力要素である「貫筋かい」の地組み作業(左写真)。
本建物の周辺には特に建物等の障害がほとんどなく、施工の手間を考えてた上で地組み作業で組み立てを行なった。
レッカーを利用して一気に建て方作業を行なった。右写真は立ち上げ作業後の貫筋かい。
もう一つの構造的な特徴として、屋根ののぼり梁を受けるアーチ梁。
桁から桁までのスパン 7.6m(約4間)をのぼり梁だけで持たせようとすると、梁せいが50cm程度となり、梁せいを30cmに収めるため、構造的に工夫する必要があった。
今回は小屋梁を設置して小屋束を立てる方式ではなく、「少しでも広い空間を」という要望により、当事務所で構造提案として、アーチ梁を組み込むこととした。
写真はアーチ梁の地組み作業である。
アーチ材の湾曲梁は、集成材では予算に合わないため、当事務所のオリジナル構法である、杉の板を曲げた「積層湾曲梁」を提案し、採用することとした。
写真はアーチ梁のセットをするところ。
ステンレス製の丸鋼管タイバーにてアーチ梁のスラスト成分を処理することとした。
写真はタイバーの設置状況である。
大空間とまではいかないが、この中空間(7.6m×7.6m)を構成するには、木造の軸組み構法では、構造的に工夫が必要であり、また、それに伴う大工技術を要するものであったが、写真の通りの出来栄えとなった。
地元岡山で、無名だが腕は確かな棟梁により精度の高い架構となり、木構造設計者としても感心する内容であった。