建設地 | : | 鳥取県智頭町 |
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意匠設計 | : | 本間設計 |
構造設計 | : | 木構造建築研究所 田原 |
施工者 | : | 寺谷組 |
この山郷小学校は鳥取県の南東部に位置し、中国山脈の真中とも言える地域であり、昔から林業の盛んな地域であった。
老朽化した小学校を改修する案として、木造の校舎が提案され、当事務所がその構造設計を行なった作品でもある。
積雪2mの多雪地域であるが、木造軸組構法で建設された小学校である。
耐力壁は筋かいと構造用合板で、耐力要素を構成し、積雪荷重を考慮したとき、ベースシャー0.25程度を確保し、積雪がないときの耐震性能は0.35以上を確保している。
床仕上げは、板張りだが、構造用合板を下地として剛床仮定が成り立つようにしている。また、建物各部には、地元の大工技術による伝統構法を生かした構法を用いている。
地元の大工技術により小屋組みを和小屋組みとし、小屋には貫を設置している。
しかし、貫があるだけでは風や地震に有利であるとは、一概に言えない。
本来ならばこの地域は多雪地域であるので、小屋貫では屋根を固めることは難があるのだが、構造的に工夫をすることで、伝統的な技術で構成された小屋組みを用いても問題はない。
そこで上図のように、壁線上の小屋部分まで耐力要素を設置することにより、十分粘りのある構造となる。
地震等の水平力を屋根・外部耐力壁・内部耐力壁等で処理することが出来れば、小屋組みは鉛直力のみを負担すればよいのである。
また、小屋束の接合部も上下の横架材へ長ほぞ込み栓で収めている。
このような空間の構成も構造デザインより決定したものである。
この多目的ホールは、短辺が11m、長辺が13mという非常に大きな空間となっている。
メインフレームの材は、丸太で構成されている。(柱:末口32cm程度 のぼり梁:末口24cm程度)
原則的には前記の2階階段ホールと同様に、小屋部分まで耐力要素をつなげなくてはならない。
また、多目的ホールは、前記の2階階段ホールと比べて大きな空間を有しているため、上図のようなリブ的な要素を3mごとに設けた。
このリブ的な要素により、屋根面が受けた水平力を、妻側鉛直構面へスムーズに流すことが出来る。
リブ要素がなければ屋根が下左図のような変形しやすくなるのである。
さらに、屋根面が剛でなければ、下右図のように屋根が変形してしまうので注意が必要である。