No.1 U邸

1996年 2月
兵庫県南部地震で被災した300年前の伝統的民家を近代化・耐震補強
1998年度建築学会作品選奨 受賞
建設地兵庫県明石市大久保
監修明石高専建築学科 八木 雅夫
意匠設計神谷昭雄建築研究室
構造設計木構造建築研究所 田原
施工者 川島工務店
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改修工事中のU邸


日本の古民家の多くは、地震に対して強いとは言いきれない。

特に、西日本では、その気候(夏の蒸し暑さ)ゆえに開放的な空間で、構造上有効な耐力壁の少ない建物が多い。

また、2階建では大抵の場合、1階が縁側として下屋になっており、上下階の壁位置が一致していないという問題がある。

これらの問題点は、U邸についてもあてはまり、兵庫県南部地震において、大被害を引き起こした。



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被災した直後


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改修工事中


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大黒柱 柱脚部分の補強


被災した直後の写真では、田の字平面の和室と広縁の境(2階外壁位置)で大変形が生じて、直交の壁面が崩落し小舞が見えているのが確認できる。

改修工事では、変形の抑制・重量の伝達を行なう為の耐力壁補強・増設を行なうと共に、付随してRC基礎の設置、各接合部の緊結等の処置を行なったものである。

また、屋根を土葺き瓦から桟瓦として軽量化を図った。



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改修後の1階平面図

改修後の平面図で、北側袖壁(赤色で塗った部分)を設けた理由には、意匠設計者から「なるべく現状を変えないでほしい」という要望があったため、縁側に接する部屋の前面には壁(耐力要素)を設置せずに、外部に袖壁を設置することとした。



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        おもりの基礎          柱脚金物HD金物2.5t用

 この袖壁は、室内側に耐力壁がない分、地震等の大きな外力を負担することになるので、構造用合板を両面張りとした。

しかし、壁を強力にすると、地震等の外力を受けたときに、壁自身が回転(剛体回転)をしようとするため、基礎でその回転力を止める必要が出てくる。

本建物では、基礎のコンクリート(約4t)をおもりにすることで、壁の回転力を抑えることとし、また、柱脚部にも大きな引抜力が発生するためそれに対応する、ホールダウン金物の2.5t用を設置した。



 
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改修工事完了後のU邸


 ©Tahara Architect & Associates, 2003