マスコミでは今回の地震に対し、割と早い段階で「多雪地域であるための高床基礎が地震被害を小さくした。」との見出しを付けている報道もあったが、実際に現地に行き調査した結果、その様なことはないと断言できる。
何故その様なことが言えるかと言うと、震度6弱から震度7の地域を調査し、その被害状況を調べ、高床式の基礎がある木造住宅の被害率は大破以上の被害は調査した限りでは50%を越えていた。
特に、川口町田麦山地区では2/3以上が大破以上の被害を受けており、間違った情報ではなかろうかと思われる。これは日本海側の多雪地域における建築基準法の特例措置でもあり、税的緩和の特徴でもある高床基礎は、本来ならば構造安全上混構造の3階建てとして構造安全性能の検討が必要であるが、こういった特例措置は昭和40年代後半に制定され、その時は、高床基礎の構造的な検討のみでよく実質2階、3階の木造住宅は2階建てと判断され、簡易な審査だけで検査等も済んでしまっていたのである。
これは、20世紀(2000年)までの木造住宅は、こういった問題点をまだまだ抱えており、その当時の技術基準が甘すぎたと言っても過言ではないと思われる。
特に建築関係者にはそういった罪の意識が薄く、「その当時の基準に沿ってやっているので何の問題も無く、違法でもないので被害を受け亡くなったとしても、それは自分達のせいではなく、技術基準を整備していなかった基準法のせいだ。」と開き直る人が少なからずいるであろう。
大事なのは責任の所在ではなく、日本の木造住宅を取り巻く問題が今なお取り残されたままで、変わりそうにないということだ。
家を建てる人、建てて既にお住まいの人に知って欲しいことは、行政の審査は「自分の希望する安全を保障したものではない。」ということだ。というのは、家を建てたときに審査される項目は図面通りに出来ているか否かのチェックだけで、構造上大事な「接合部」、「壁配置」など構造計画や構造計算等は、2階建て木造住宅では、家を建てる人が望まない限り、もしくは設計者の意識に上らない限り行なわれないのである。