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新潟・福井大水害に関して(その一)



7月中旬の新潟・福井大水害に関して木構造技術者としての思いを述べる。

この種の災害に関しては、昨年の7月20日に九州で起きた水害について「木のコラム」で述べている通りの事と同じ要因だと思われる。

特に近年の時間当たりの降水量や、分当たりの降水量は記録的であり、やはり地球温暖化の影響とも思われるが、降水量そのものと地表の単位面積当たりの保水能力との複合的要因であると思われる。

つまり、「観測史上記録的な豪雨」と言う文章で一まとめにしているが、気象観測をしだして数十年程度の記録での結果であり、数千年または数万年の統計がもしも得られていたならば、それ以上の雨量を観測していたかもしれず十分起こりえる降水量であったのかも知れない。

現在の河川流水限界量はたかだか数十年程度の観測での結果に対して安全を確保しているにすぎないのであり、今回のように河川流水限界量の1.5倍〜2.0倍であれば、河川改修した堤防等であっても防御にならないのである。

これは、地震対策等(耐震対策における地震動の想定や耐震補強における安全限界地震動)にも当てはまる事で、過去に記録された地震動で安全を想定しているのである。

「安全」と言う意味の持っている曖昧さや限界を、広く国民に知らせなければいけないのであり、この事こそ「技術者の存在する意味」でもあると思う。


今回の被害は将来の予防対策の糧であり、詳細な説明をすると次のように言える。

全国の河川で想定している河川流水限界量は時間雨量で50mm程度であり、それ以上の降水量(今回のように時間雨量が75mm以上)であれば必ず堤防等の被害が発生すると予想しておいた方が安全であり、人命確保にもつながる防御方法だと思われる。 だからといって、想定河川流水限界量の時間雨量を100mm程度で設計すると今以上の堤防が必要であり、それを全国の河川で行うには莫大な資金が必要であるため現実的ではないと思う。(ゼネコン等は専門家と一緒になって「それ」が必要と言いふらすだろうが)

そのような場当たり的対策より、雨水の河川への集中排水でなく分散排水の可能性を国土の地表面に可能性を求めるようにした方が現実的だと思われる。

次回の(その二)で各地に起きている地表面の保水能力の実態について説明(警告)する。


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©Tahara Architect & Associates, 2004