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木で造る剛接合とは(2)



集成材による接合部の構造特性としては、接着剤と金属による構成であり、この二つの要素が大きなウエイトを占めている。

接着剤は非常にもろい破壊を起こしやすいので、接着層による破壊は起こさないで(時間的信頼性が確保されていればのことではあるが?)金属と木材を破壊していくことにより、粘りと剛さ、および耐力を確保しているのである。

しかし、破壊形式が粘りのある破壊といえども、ボルトやピンがせん断による曲げ降伏を起こしながら木材にめり込んでいき、最後にはぐちゃぐちゃな木材の割裂破壊が発生して終わるのがほとんどである。

つまり、集成材によるラーメン構造で水平力に対して抵抗する最も重要な要素は、接着層や木材の脆性的な破壊を起こさせないで、鉄による曲げ破壊を優先させ、木材に割裂等を起こさないようにさせることであるといえる。

この理屈が成り立つならば、鉄の曲げ破壊を最優先し、木材にめり込ませる事によりエネルギーを吸収するのであれば、骨組の肉である要素は木材でなくても何でも良いのではと思う。

一方、伝統構法による接合部の構造特性としては、木の繊維方向の違いによる特徴を利用し、木材の抵抗要素として次のようなもろい抵抗要素(曲げ、せん断、引っ張り、圧縮、対座屈、及び最も複雑な破壊とされる割裂)等の破壊にはしないで、木材の中で唯一粘りを発揮する「めり込み(繊維方向に対する横圧縮)抵抗」を利用することによって、やわらかいが粘り強い接合方法を構成している。

しかし、この伝統構法を過信することは危険であり、構造的な検討をしないまま安易に評価すると、「阪神・淡路大震災」時の多くの神社・仏閣のように、倒壊してしまう可能性が高いこと理解し、木構造の技術者協力により、安全な伝統的木造建築を設計してほしいと心より思う。


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 ©Tahara Architect & Associates, 2003