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9月前半に日本に接近した台風14号



9月11日、沖縄宮古島を通過した台風14号による現地での中心付近の最大風速は55 m/s、最大瞬間風速は74.1m/sを記録した。

現行の建築基準法では、各地域で30〜46 m/sの基準風速を定め、それに応じて決まる風圧力に耐えられるような設計とするよう定めている。

沖縄では最大の46 m/sが適用されているが、今回の台風はそれを大きく上回る風速であった。

体育館の屋根が吹き飛ぶ、電柱が倒れるなどの被害に加え、今回は住宅等のガラスが割れる被害が非常に多かったという。

一般的に窓ガラスで使用されるガラスの厚さは3〜4mm程度のものだが、沖縄では台風の影響を考慮して5〜6mmのものが使用されるという。

通常の台風であればそれでほぼ問題ないということだが、突風で吹き上げられた小石などが当たった衝撃によって、亀裂が生じたためにそこから割れてしまう可能性がある。

小石のように小さなものでも、強い衝撃となるほどの強い風であったのだろう。

また、一部の窓が割れていたりドアが開いている時に突風が吹き込むと、内部と外部の気圧差で一気に窓ガラスが割れてしまうこともあるという。

最近では、建築技術の進歩とともに雨戸なしのガラス窓や戸になることが多くなっているが、そういった技術の進歩とともに、過信や油断が生じていたのではないだろうか。

自然は人間の想像をはるかに上回る力を持っているということを、私たちはけして忘れてはならない。

特に避難場所に指定されるような建築物の場合、一般の住宅と同じように被害を受けていては避難場所としての役目を果たすことができないのだから、やや過剰ではないかというくらい強くても良く、コスト対費用効果として複層ガラス等にした方が良いのではないだろうか。

今回は体育館などでもガラスや屋根が吹き飛んでいる被害があり、避難所たる役目を果たしていない。

史上最大の台風だったわけでもないのにこの状態では、本州にこのような予想外の台風が来た場合では、まったく歯が立たないだろう。

地球温暖化が進行すれば、やがて本州でも「沖縄」並みの風速が記録されるようになると思われるのだが・・・。

こういったことを防ぐために、「基準法の条件は満たしているから大丈夫だろう」などと思わず、設計者自信が安全のためには何が必要なのかを考えなくてはならない。

最近はコスト削減と言われるばかりで、設計者の判断で強くしようと思っても、予算がないからといってぎりぎりの強度にしかできない場合も多くあるだろう。

そうやって建てられたものでは、やはり自然災害には耐えることができないのである。

もう一度、災害時に命や財産を守る(建築基準法第一条)ということはどういったことなのか、きちんと考え直さなければならないのではないだろうか。


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 ©Tahara Architect & Associates, 2003