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品確法のこぼれ話(3)



(2)の続き

性能評価における現場検査の実態

品確法が施行されて早3年がたとうとしているが、設計者の実態は(1)(2)で説明した通りである。

今回は、審査としての問題点について述べてみたいと思う。

品確法の性能評価審査機関は民間の審査機構が各都道府県に一社以上あるが、それぞれの審査機関の審査員の能力はまちまちなことがわかった。

木造住宅(四号物件)と言われる小規模な木造住宅は、年間の着工件数が建築物の中では圧倒的に多いため、各行政庁の審査員だけではこの品確法に対応するのは難しいと思われていた。

そこで行政改革と伴って、民間に審査機関の組織を立ち上げてもらい、そこで建築確認及び品確法の性能評価を行うこととしたが、審査員も木造住宅における構造技術能力の劣る人が少なからずいるのである。

これは非常に由々しきことであり、施主が一生かかって支払う住宅が現場審査20分〜30分程度で終了し、その検査項目も、耐力璧の位置とその耐力璧の壁倍率の仕様におけるチェックと金物の検査等である。

しかし、すべての耐力壁の仕様規定における基本となるべきファスナー(釘・ビス等)を打ち込まれている大きさや間隔、端距離、淵距離はあまり関心がないのか、ほとんどチェックしないまま検査が終わっているのである。

HD金物等におけるボルトやラグスクリューの施工方法においても、性能の出ない施工方法であっても何も注意しない。

また、N値計算や許容応力度計算をしないで金物を選択する場合は、告示1460号の表より金物を選択することになるが、その場合は非常に金物が多くなる。

特に、HD金物の基礎に対するアンカーボルトの設置は非常に精度を要求されるので、悪知恵の働く建売業者などは、座付きボルトを使って土台を座掘ってセットしている。

このような場合、表面からの審査では絶対わからないのである。

この土台への座付きボルトの許容耐力はHD金物10kN用まで認められており、10kNを超える場合は基礎にアンカーしなければならないと規定されている。

このことは日経アーキテクチュア2003年6月9日号で説明しているが、こういったことを理解していない施工者や設計者が非常に多いのも事実である。

また、この点に対して注意して現場検査を行っている性能評価機関の検査員も非常に少ない。

これは、自分の家は自分で守らなければならないということである。

いくら民間の検査機関が検査していても、構造の安全面で見落としがあれば誰が責任を取るのだろう。

民間の検査機関が取ってくれるのだろうか?

いったい誰なんだろう・・・


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 ©Tahara Architect & Associates, 2003