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「文化財」保存という名の密室作業



「文化財」といえば日本人の誰もが木造の神社仏閣等の古い建築物を思い浮かべるであろう。

この「文化財」の保存や改修等に携わることの出来る人間は、ごく少数であり、誰がどのようにして選んでいるのか全く分からない。

しかし、「文化財」保存に深く関わる建築関係者がいるのは、間違いない。

また、「文化財」の補修等の費用の一部又は全額は、全て国民の税金で行なわれているといっても良い。

それなのに、その閉鎖的な機関からの「文化財」保存に関わる工事の技術的内容等の成果は、ほとんど国民が知りえるような内容で発表されることはなく、それらの内容のほとんどが特殊解であり、国民のその様なことに関心を持つ人々に、利用される技術でもない。

本来ならば、そのような「文化財」等の伝統的木造建築物における、補修等の技術は、公開されるべきであり、税金を納めた国民の財産でもあるといえる。

それが、大手ゼネコン等における特殊解がまかり通り、学者等もそれに便乗し、多様な実験及び研究素材として、色々な関係者が寄ってたかって食い物にしていると思うのは、少なからずいるのではないだろうか?

なぜ「文化財」というだけで、桁違いな建設費で、保存等が行なわれるかといえば、「文化財」は復元すべきが原則であり、そのため、どんなにお金がかかっても完璧なまでに昔のままの状態に戻すため行なわれている。

しかし、ほとんどの木造建築物の「文化財」は、耐震・耐風的に補強が必要な状況にあるが、免震装置やステンレス等における隠れ補強で補修等の工事が行なわれているが、表面上はほとんど元通りであり、一般の市民や建築を学ぶ学生等も、建設時の綺麗さや豪華さに魅了され、当時のことに想いを巡らせ、「文化財」の魅力に惹かれるのだと思う。

つまり、ほとんどの「文化財」といえる木造建築等は、何がしかの耐震補強がなされており、その対策がとられていない「文化財」は、ないといっても過言ではない。

また、日本の木造建築の極みとも言える、東大寺の大仏殿の大屋根も、江戸時代の末期には木材のクリープ等により、大屋根がたわみ、明治時代に英国製の鉄骨トラスで補強されて現在に至っているのである。

現在復元設計が終わろうとしている「大極殿」は、この大不況の中、数百億円という巨費を投じて、一部の関係者のみが行なっており、果たしてここでどんな技術が組み込まれ、それがいつ、どのようにして我々一般市民に還元されるのであろうか?

税金は納めた国民に還元されるべきものなのだが・・・・(ただ見ることによって還元されるというならば拝観料等は取りすぎではないかと思われるのだが)


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 ©Tahara Architect & Associates, 2003