昭和63年3月発行の(財)日本住宅・木材技術センターによる「木造3階建て構造設計〜手引き」は、厳密に云うと許容応力度設計といえるものではなかったといえる。
この本の内容としては、建物質量からくる水平力を算出し、これに対応する壁量を満たす事で間接的に安全を担保しているにすぎなかった。
しかし、平成13年12月発行の(財)日本住宅・木材技術センターによる、今度の新しい許容応力度設計法では、「許容応力度設計(弾性設計)」であるが、靭性域の検討も考慮されている。
つまり、保有水平耐力の検討を間接的にしているということであり、この事は新しい許容応力度設計では建物の耐力を強度だけではなく、耐力壁の先行破壊とその廻りの接合部の耐力と靭性も勘案して求めることができるようになっているのである。
これに建物の全体の抵抗効果等を組み合わせれば、かなり詳細な構造的検討が木造住宅でも可能になってきたといえる。
これは今までの壁量計算にて、全体耐力の1/3と見なされていた「雑壁(余力)」が計算できるようになってきたということで、逆に言えば、新しい計算法では余力が非常に少なくなってしまう可能性がある。
このような状況のもとでは、計算で想定したことが実際に成り立つような設計・施工監理がより重要になってくることを念頭においておかなければならない。
つまりこれからの木造住宅は十分な余裕がある建物がある反面、安全率ぎりぎりで余裕のない建物も存在するようになると云うことである。
現行の建築基準法施行令では、大規模な建築物やバランスの悪い建物等については、大地震に対し終局強度型設計を行うこととし、建物の保有水平耐力を計算して安全を確認することになっている。
また、大地震時にどのような挙動を示し倒壊・転倒しないかは、個々の建物毎の条件によって異なり、大地震時に倒壊・転倒しないかを判断するためには、終局状態を明らかにする必要があり、この場合は終局状態を想定して設計する限界耐力設計法(終局強度型設計法)が必要になる。
しかし、現時点では許容応力度設計法がようやく実際に使えるようにまとまった段階で、限界耐力設計法においては実務者にはすぐ使えるようなマニュアルはまったくまだ完備されていないのが現状である。
いつ誰がどのような形で出版されるか分からないが、木造住宅程度の設計料で果たして誰がそこまで詳細な設計をやるというのだろうか・・・・